香老舗林龍昇堂

〒604-8258
京都府京都市中京区三条通堀川東入 橋東詰町15
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営業時間:9:00~19:00 (土曜祝日は18:00 / 日曜定休日)

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そのようなご要望にお応えすべく、「お香について」というタイトル・内容で資料を作成致しましたのでご紹介させて頂きます。

最近お香への興味を持ち始めた方にも、永くお香をお使いの方にも、わかりやすい資料になるよう工夫致しました。お香についてご理解を深めて頂く一助となれば幸甚です。

Ⅰ. お香とは

1. 種類

Point

一般的に香木・線香・焼香など、香りもの全般を指すが、狭義には香木(伽羅・沈香・白檀等)のみを指すこともある。

  • 香木(沈香)
  • 香木(白檀[乱])
  • 練香(ねりこう)
  • 印香(いんこう)
  • 線香
  • 焼香
  • 渦巻線香
  • 掛香(かけこう)
  • お座敷香
  • 塗香(ずこう)
  • 匂い袋
お香を香らせる方法と原材料の状態
方法原材料
火・熱原木・割った状態刻んだ状態粉末状
火を使わず香らせる香木(白檀)掛香文香匂い袋匂い袋塗香抹香
間接的に熱を加える香木(加羅/沈香/白檀)香木(加羅/沈香/白檀)抹香印香練香
直接火をつける香木(加羅/沈香/白檀)香木(加羅/沈香/白檀)焼香印香線香(薫物線香・香水線香)線香(長尺線香・墓参線香)渦巻線香お座敷香

2. お香の焚き方

Point

お香に加えられる熱が高ければ高いほど、香りを発する時間が短くなり、香りの広がりが早い。

低温聞香(もんこう)
  • 香炉を掌で覆い、掌中に溜まった香りをじっくり観賞する(=聞く)方法。主に香木が用いられる。
  • 香炉の灰の中に火が回った炭団を埋め、灰の山を作る。山頂から炭団への空気穴を1本作り、山頂に銀葉(雲母板)、その上にお香を置く。
空薫(そらだき)
  • 部屋等の広い空間へ香りを漂わせて楽しむ方法。主に香木、練香、印香が用いられる。
  • 香炉の灰の中に火をおこした炭を軽く埋めて灰を熱する。熱くなった灰の上にお香を置く。
高温直接お香に火を付ける

3. 香りの表現

Point

味の表現と同じ「五味(甘、酸、辛、鹹、苦)」を使用。

五味の具体的なイメージ
五味読み意味具体的なイメージ
かんあまい蜂蜜の甘さ
さんすっぱい梅干し等のすっぱさ
しんからい胡椒、唐辛子等の香辛料の辛さ
かんしおからい昆布等の海藻を火にくべた時の磯の香り
にがい柑橘類の皮を火にくべた時の苦さ

※ 一般的な味の基本五味は、「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」とされており、香りの五味とは少し異なる。

Ⅱ. 日本のお香の歴史

飛鳥時代仏教とともに日本へ伝来

538年仏教伝来
焚香料を使用した「香」が伝来し、仏教儀礼で用いられ始める。(それまでは杉や檜等の自然の香りが中心)
595年淡路島に沈香木が漂着
「漂着した木を島民が焚いたところ、驚くほどの芳香を放ったために朝廷に献上し、聖徳太子がそれを沈香木と鑑定した」と日本書紀に記述あり。

奈良時代間接的に熱を加える焚き方が始まる

753年鑑真和上が来日
仏教の戒律とともに、香料やその配合技術、煉香の製造方法が伝わる。それまでの香は供香(直接火にくべる焚き方)のみだったが、煉香によって間接的に熱を加える焚き方が加わった。

平安時代趣味として香りを楽しむ文化が成熟

煉香が「薫物」として発展し、貴族たちの間で流行。彼らは香料を自ら調合し、独自の香りを創出。薫物を部屋や衣裳に焚き込め、移り香を楽しむようになる。

薫物はやがて香りやその背景の優劣を比較する薫物合わせに発展。

鎌倉・室町時代香の主役が薫物から香木(沈香)へ

交易の発展に伴い、多種の良質な香木が流通し、趣味としての薫物に代わり香木が普及し始める。特に伽羅や沈香は価値が高まり、蘭奢待(後述)などのように権力の象徴的側面を持つようになる。

香道の誕生
足利義政が所有する莫大な量の香木を分類する必要に迫られ、「六国五味(※)」という分類法を編み出し、用具や聞香方法も様式化して香道が誕生する。
(※) 六国:伽羅、羅国、真南蛮、真那伽、佐曽羅、寸門陀羅、 五味:甘、酸、辛、鹹、苦

江戸時代香の一般大衆化が進む

政治経済が発達・安定したこともあり、香木の使用が一般社会にも及び、香道も武士のみならず、有力町人層にも広がりを見せる。趣味から芸道へ。

線香の製造
大陸から輸入した線香が16世紀半ばから普及し始める。17世紀末頃から現在と基本的に同じ製造方法での国産化が始まる。
線香が宗教儀礼から一般家庭に至るまで広く普及する。

現代多様な香りが求められる

文明開化の影響や大きな戦争を経験していく中で、これまで築き上げてきた香の文化が衰退。その後、徐々に見直されつつ今日に至る。

最近では香木(伽羅、沈香、白檀)の希少価値が増していく一方、人それぞれの好み、生活スタイルに合った香りが求められています。

Ⅲ. お香の原材料

伽羅
沈香の中で最上品質のもの。沈香と異なり、熱しなくても芳香を放つ。元来ベトナム等の熱帯雨林で採取されたが、現在はほぼ入手困難。
沈香
樹木の中の樹脂が年月を経て凝固したもの。熱せられると芳香を放つ。凝固した樹脂が多ければ多いほど良質で、色も黒い。
白檀
主にインド等で栽培されており、甘く爽やかな香りが特徴的。熱しなくても芳香を放つこともあり、線香や匂い袋のみならず、仏像等の彫刻、扇子、念珠など、幅広く香材として用いられている。
  • 伽羅
  • 沈香
  • 白檀
三者比較
伽羅沈香白檀
主な採取地ベトナム、カンボジア等インドシナ半島、インドネシア等インド、インドネシア、マレーシア等
香りの特徴甘酸辛鹹苦が融合、熱しなくても香る酸味や甘味が融合、熱せられると香る甘く爽やか、熱しなくても香る
効能鎮静鎮静鎮静、防虫
御香としての用途香木香木、線香、焼香等香木、線香、焼香、匂い袋等
現況新たな採取は困難人工的な沈香の研究開発が進行中良質な白檀の希少価値が高まる
小売価格(参考)1g:40~50千円15g:3~50千円15g:1~3千円

香木伽羅 / 沈香 / 白檀

Point

形状は場面に応じて使い分けるのが良い。

割(わり)
香木の幹・枝・根などの硬く太い部分を斧などで四角く割ったもの。儀礼や催事、茶会等の非日常的な場面での空薫に用いられることが多い。
刻(きざみ)
香木の枝・根・表皮などの小さかったり柔らかい部分を刻んだもの。焼香や日常の空薫などで用いられることが多い。
木(ぼく)
香木の枝・根・表皮など、そのままの形のもの。刻と同様、日常的な場面で使われることが多い。使う際は、自分で小刀等で削るなどして好みの大きさに切り分けてから使う。
  • 割割(わり)
  • 刻刻(きざみ)
  • 木木(ぼく)

その他の天然原材料

丁子(ちょうじ)
フトモモ科の木の蕾を乾燥したもの。主な産地は東アフリカ地方。香辛料としても利用される。クローブ。辛味や甘味が強い。
甘松(かんしょう)
オミナエシ科の草本の根や根茎を乾燥したもの。主な産地は中国。甘いが酸味もある。
桂皮(けいひ)
クスノキ科の木の樹皮を乾燥したもの。薫香用は中国広南やベトナム産が多い。シナモンやニッキは同類だが生産地が異なる。酸味、苦味。
大茴香(だいういきょう)
モクレン科の木の果実を乾燥したもの。主な産地はインドシナ北部や中国南部。香辛料としても利用される。スターアニス。酸味・辛味。
  • 丁子(ちょうじ)
  • 甘松(かんしょう)
  • 桂皮(けいひ)
  • 大茴香(だいういきょう)
山奈(さんな)
ショウガ科の草本の根茎を乾燥したもの。主な産地は中国。辛味や酸味が強い。
藿香(かっこう)
シソ科パチョリの全草を乾燥したもの。主な産地はフィリピンやインドネシア。辛味が強い。抽出オイルが香水に使用されることもある。
麝香(じゃこう)
チベット等に生息するジャコウジカ(雄)の腹部の香嚢から得られる分泌物を乾燥したもの。現在はワシントン条約で国際取引が禁止中。
龍脳(りゅうのう)
フタバガキ科の木を水蒸気蒸留し、昇華・冷却した後に出来る結晶。主な産地はスマトラ等。酸味が強い。防虫、中枢麻痺作用を有する。
  • 山奈(さんな)
  • 藿香(かっこう)
  • 麝香(じゃこう)
  • 龍脳(りゅうのう)

Ⅳ. 線香ができるまで

製造工程

Point

品質を一定にするためには「攪拌(かくはん)→成形」が特に重要

原材料
(沈香や白檀などの粉末)

第香
  1. 調合
  2. 匂香
  3. 攪拌
  4. 完成
  5. 乾燥
  6. 成形
匂香(においこう)
  • 原材料を調合した香りの源。
  • 使う原材料の種類、使用量(割合)等によって、完成時の香りが変わる。
第香(だいこう)
  • 杉やたぶ(椨)等の木の粉末。
  • 水を加えると粘る性質を持ち、形を保持するためのつなぎとして使用。
  • 杉はキメが細かくて火の渡りが良いが、杉自体の香りが強くクセがある。
  • 薫物線香には主にたぶ粉が使われる。

香りのポイント

Point

香りは「匂香」によってほぼ決まる

匂香には数種類~数十種類の原材料を使用。
線香の種類に応じて、原材料の種類・使用量を使い分ける。

一般的に、高級な線香であればあるほど匂香の中に占める高級な原材料(沈香や白檀等)の割合が大きく、沈香や白檀の中でも質の高いものを使用している割合が大きいが、香りの好みは人それぞれであり、値段と香りの好き嫌いは必ずしも比例しない。

  • お座敷香お座敷香
  • 印香印香

※ お座敷香や印香は、線香を成形する前のものを円錐形や花形の型に押し込んで作る。

Ⅴ. 香道まめ知識

蘭奢待(らんじゃたい)

Point

東大寺大仏建立(752年)の際に中国から取り寄せ、供されたとされる日本随一の名香(時期は諸説あり)。また、蘭奢待は雅号で、正式名称は黄熟香(おうじゅくこう)である。

出典:宮内庁ホームページ(http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Treasure?id=0000012162)

時代の権力者たちの蘭奢待への関心は高く、足利義政、織田信長、明治天皇らが香片を削り取ったことが文書や痕跡に残る。

全長は約1.5mもあり、「蘭奢待」という文字の中に、「東大寺」という文字が隠れており、名付けに関する当時の工夫が窺い知れる。

源氏香

Point

源氏物語をテーマに、香木の香りの聞き分けを競い合う「組香」の代表的存在。

組香の段取り
5種の香木から5粒ずつ切り取り、1粒ずつ小さい紙で包む。
  • 合計25個の包みから無作為に5包を選び出し、1包ずつ焚いて香りを観賞。
  • その香りの異同を判定し、正解数を競う。
回答方法
5包の香の中で、どれとどれが同じか別々か、同じ香を繋ぎ合わせた図形で回答。
  • 回答の組合せが52通り
  • 源氏物語全54巻のうち、巻頭「桐壺」と巻末「夢浮橋」を除く52の巻名がそれぞれの図柄に付されている。
回答例
1番目と3番目、2番目と4番目が同香である時 = 花散里(はなちるさと)
3番目と4番目が同香である時 = 明石(あかし)
1番目と5番目、2番目と4番目が同香である時 = 真木柱(まきばしら)
花散里(はなちるさと)
明石(あかし)
真木柱(まきばしら)
源氏香之図
  • 帚木(ははきぎ)
  • 空蝉(うつせみ)
  • 夕顔(ゆうがお)
  • 若紫(わかむらさき)
  • 末摘花(すえつむはな)
  • 紅葉賀(もみじのが)
  • 花宴(はなのえん)
  • 葵(あおい)
  • 賢木(さかき)
  • 花散里(はなちるさと)
  • 須磨(すま)
  • 明石(あかし)
  • 澪標(みおつくし)
  • 蓬生(よもぎう)
  • 関屋(せきや)
  • 絵合(えあわせ)
  • 松風(まつかぜ)
  • 薄雲(うすぐも)
  • 朝顔(あさがお)
  • 乙女(おとめ)
  • 玉鬘(たまかずら)
  • 初音(はつね)
  • 胡蝶(こちょう)
  • 蛍(ほたる)
  • 常夏(とこなつ)
  • 篝火(かがりび)
  • 野分(のわき)
  • 行幸(みゆき)
  • 藤袴(ふじばかま)
  • 真木柱(まきばしら)
  • 梅枝(うめがえ)
  • 藤裏葉(ふじのうらば)
  • 若菜(上)(わかな(じょう))
  • 若菜(下)(わかな(げ))
  • 柏木(かしわぎ)
  • 横笛(よこぶえ)
  • 鈴虫(すずむし)
  • 夕霧(ゆうぎり)
  • 御法(みのり)
  • 幻(まぼろし)
  • 匂宮(におうのみや)
  • 紅梅(こうばい)
  • 竹河(たけかわ)
  • 橋姫(はしひめ)
  • 椎本(しいがもと)
  • 総角(あげまき)
  • 早蕨(さわらび)
  • 宿木(やどりぎ)
  • 東屋(あずまや)
  • 浮舟(うきふね)
  • 蜻蛉(かげろう)
  • 手習(てならい)

香十徳

Point

漢詩。お香の効用を称え記したもの。日本では一休禅師が広めたとされている。

  1. 感格鬼神:感は鬼神に格(いた)り(感覚が研ぎ澄まされ)
  2. 清浄心身:心身を清浄にし(心身を清らかにし)
  3. 能除汚穢:よく汚穢(おわい)を除く(汚れ穢れを取り除く)
  4. 能覚睡眠:よく睡眠を覚まし(心地良い目覚めを誘い)
  5. 静中成友:静中に友と成り(静けさの中に安らぎをもたらし)
  6. 塵裏偸閑:塵裡(じんり)に閑を偸(ぬす)む(多忙な時も心を和ませ)
  7. 多而不厭:多くして厭わず(多くあっても邪魔にならず)
  8. 寡而為足:寡くして足れりと為し(わずかでも満足を与え)
  9. 久蔵不朽:久しく蔵(たくわ)えて朽ちず(いつまでも変わらず)
  10. 常用無障:常に用いても障りがない(常に効力を発揮する)